IFWHITEAMEЯICATOLDTHETЯUTHFOЯONEDAYIT’SWOЯLDWOULDFALLAPAЯT / MANIC STЯEET PЯEACHEЯS
(※タイトルを読みやすくすると、IF WHITE AMERICA TOLD THE TRUTH FOR ONE DAY IT’S WORLD WOULD FALL APART*1となります)
“来週木曜日は、ライジング・タイドの生放送、ロナルド・レーガン*2祝賀式典をお届けします。ホストはヘイリー・バーバー*3、スペシャルゲストにマーガレット・サッチャー女史*4をお迎えして、前大統領の83歳の誕生日をお祝いします。参加チケットは1枚1000ドル、しかし、式の様子はGOP*5 TVにて無料でご覧頂けます”
完璧さの象徴 日焼けした肌 ナパーム弾*6
誰を我々のモラルの象徴として選ぶべきか
俺はたった今 ハリウッドの悲劇について考えている
ビッグ・マック*11 スマック*12 リヴァー・フェニックス*13
さあさあみんな微笑んで
キューバやメキシコだって 俺たちの規律を食い止めることはできなかったし*14
まったくお前らのアイドル達は この世の奈落を教えてくれる
なのにお前らのモラルは どこまでいっても表面的
クール グルーヴィー 朝 気分は爽快*15
ティッパー・ゴア*16だって俺の親友だったし
俺は自由の国が大好きさ
星条旗や ママの手作りアップルパイも
英保守党は「ユニオン・ジャックには黒はない」*17なんて言うし
コンプトン *18やハーレム*19では ヒモ男が司祭をファックし
白人達は新たなモラルの救世主を見つけ出したんだ
政府統計 重要なのはそいつらの肌がどれだけ白かったかってことさ
スラム街での発砲なんて 誰も真面目に取り扱いやしない*20
爽快な朝 一日の始まりに目覚ましのコーヒーはいかが?
白人特権 悩みなんてすべて吹き飛ばしてくれます
何でもナンバーワン、ベスト、俺が口を挟む隙もない
俺はモラル・マジョリティーにお仕えするためにここにいるんだから*21
クール グルーヴィー 朝 気分は爽快
ティッパー・ゴアだって俺の親友だったし
俺は自由の国が大好きさ
星条旗や ママの手作りアップルパイも
ザプルーダー*22は世界初のオナニー野郎
世界が初めて味わった 磔刑にされた神の恩寵
我々は「ユニオン・ジャックには黒が足りない」と言うし
我々は「星条旗には白が多過ぎる」と言おう
ブレイディ・ビルなんかクソ喰らえ*23
ブレイディ・ビルなんかクソ喰らえ
連中が言うには
「もし神が人類を創造したのなら サム・コルトこそが人類を平等にした」*24
*1:アメリカのコメディアン・批評家・諷刺家であったレニー・ブルース(Lenny Bruce)からの引用。「ある日もし白人アメリカが真実を明かしたならば、その世界は崩れ落ちるだろう」。
*2:アメリカ第40代大統領(1981年~1989年)。かつてはカリフォルニア州知事であり、俳優でもあった。
*3:アメリカの政治家で、第62代ミシシッピ州知事を務めた(2004年~2012年)。
*4:イギリス第71代首相(1979年~1990年)。イギリス初の女性首相であり、保守的・強硬な性格から、「鉄の女」の異名を持つ。
*5:GOPはGrand Old Partyの略。アメリカの共和党の別称。
*6:アメリカの洗練されたライフスタイルと、戦争国家としての一面が対比される。
*7:1959年のキューバ革命以降、カリブ海地域は冷戦下の東西対立構造に巻き込まれていくこととなり、アメリカにとって当地域の親ソ勢力を排除することが課題となった。1983年、カリブ海に浮かぶ島国グレナダでクーデターが起きる。グレナダが「第二のキューバ」となることを恐れたアメリカは、レーガン大統領の決断のもと、武力介入を行った(グレナダ侵攻)。これはアメリカにとって、ベトナム戦争以来の大規模な軍事侵攻となり、結果はアメリカ側の大勝利に終わった。
*8:ハイチでは、1957年~86年にかけて、デュヴァリエ父子による恐怖政治が行われていた。「世界で最も浅ましい国の一つ」と称されるまでに至ったこの恐怖政治に、経済・軍事援助を惜しまなかったのがアメリカであった。アメリカにとってこの独裁国家は、キューバ革命以後、左傾化しつつあったカリブ海地域にあって、革命の防壁の役目を果たしていたからだ。85年、ハイチ国内で反政府運動が急速に拡大した際、デュヴァリエ(子)の海外逃亡をお膳立てしたのもアメリカであった。ハイチの独裁政治とアメリカ支配は裏表の関係にあったのである(浜忠雄, 2011年,「ハイチ史における植民地責任:『アメリカによる軍事占領』をとおして」)。
*9:アメリカは、共産圏を崩壊に追い込むための要所として、ポーランドを重要視した。ソ連のポーランドへの軍事介入を阻止し、反ソ勢力に物資援助を行った。ア メリカの介入は、ポーランドの民主化に大きく貢献することとなり、現在、ワルシャワにはレーガン大統領の銅像が建てられている。
*10:ニカラグアでは、1979年、反政府勢力によって、三代にわたるソモサ家の独裁政権が打破された(サンディニスタ革命)。アメリカは、革命後のニカラグアに対して、親ソ勢力を排除するための軍事介入を行った。これを受けニカラグアは、自国に対する軍事行動の違法性を主張し、1984年、違法性の承認や損害賠償などを求め、国際司法裁判所 (ICJ) にアメリカを提訴した(ニカラグア事件)。1986年、ICJはアメリカの違法性を認定し、損害賠償を命じたが、アメリカは賠償を履行せず、結局アメリカの賠償はないまま、ニカラグアの請求取り下げを受けて、ICJは1991年に裁判終了を宣言した。
*12:俗語でヘロインを指す。
*13:アメリカの俳優。ヘロインとコカインの過剰摂取による心不全で死亡(享年23歳)。
*14:軍事・政治・経済・文化などの領域におけるアメリカ支配(アメリカナイゼーション)のことを指す。
*15:coolやgroovyは、典型的なアメリカ国民が使う言葉。また、朝っぱらからとにかく健康的というのも、典型的なアメリカ国民のイメージ。
*16:アメリカの第45代副大統領アル・ゴアの妻(2010年離婚)。暴力的・性的表現を含む音楽を批判し、レコードに“Parental Advisory”のステッカーを貼ることを義務付けるようキャンペーン活動を行ったことで知られる。このステッカーが貼られた作品は、大手の販売店では 購入することができない(自由の国って素晴らしい!)。フランク・ザッパやジョン・デンバーといったミュージシャンが彼女を辛辣に批判し、中でもフランク・ザッパは、彼女を「文化に対するテロリスト」と評した。
*17:1980年代、イギリスのネオナチによる黒人排斥運動のスローガンとして掲げられたフレーズ。また、イギリスのカルチュラル・スタディーズの研究者、ポール・ギルロイの著作名でもある(Gilroy, P. (1987) 'There ain't no Black in the Union Jack': The Cultural Politics of Race and Nation, University of Chicago Press.)。ネオナチのスローガンをアイロニカルに題したこの著作は、イギリスにおける黒人の政治・文化参加に大きく貢献した。
*18:ロサンゼルスにおける貧困層の居住地域。人口の大半を、アフリカ系、ヒスパニック系が占める。
*19:ニューヨークにおける、かつての貧困層の居住地域。1990年代の治安改善政策により、現在は都市開発が進んでいる。
*20:保守派にとって、殺人事件の重要性は、被害者が白人であるかどうかで決まる。黒人同士の事件や、白人による黒人の殺害は重要な事件とは見なされず、メディアで報道すらされない。
*21:モラル・マジョリティー(The Moral Majority)は、アメリカの保守派キリスト教徒による政治団体。1979年創設、1989年解散。レーガン体制を支持した極右・権威主義的団体とし て知られる。妊娠中絶反対・国防力強化などを主張し、同性愛者の迫害、国民のキリスト原理主義への転換を図った。歌詞のこの一文は、財政支援と引き換えに当団体に迎合したレーガン大統領に対する皮肉。
*22:エイブラハム・ザプルーダー(Abraham Zapruder)。ケネディ大統領暗殺の現場を偶然ビデオに撮影していた人物。このビデオのおかげで、ケネディ暗殺についての政府の公式見解に疑問が投げかけられるようになった。
*23:ブレイディ・ビル→「ブレイディ法」の通称。拳銃の自由販売を規制し、販売時には購入者の人物査定を行うことを義務付けた法律である。1993年に制定、 翌年施行(2004年に失効)。レーガン大統領暗殺未遂事件の際に銃弾を浴び、半身不随になった報道官のJ. ブレイディにちなんで名付けられた。この法律は、一見まともなものに思えるが、実際には、黒人やその他人種的マイノリティを査定で落とし、銃を保持する権利を奪うという(白人の貧困層は頻繁に犯罪を起こしていたが、白人であるというだけで査定に落ちることはまずなかった)人種差別的な法律であったとされる。
*24:“God created men, Colt made them equal”は、米国の銃器メーカー、コルト社の創業者サミュエル・コルトが用いたスローガン。